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著作権とは何か

最近、制作物についての会話のやりとりで話題になったので簡単に書いてみたいと思います。

wikipediaを引用すれば「著作権(ちょさくけん、英語: copyrightコピーライト)とは、書物、言語音楽絵画建築図形映画コンピュータプログラムなどの表現形式によって自らの思想・感情を創作的に表現した著作物を排他的に支配する、財産的な権利である。著作権は特許権商標権にならぶ知的財産権の一つとして位置づけられている。」ということに尽きます。

クリエイターはクライアント様との業務提携において、生産された制作物の著作権はまず制作者本人にあります。
この制作物の財産権を譲渡するかどうか、というところが日本では理解のないところだと感じています。常に。

例えば名刺デザインの発注を受けた場合、

  1. 印刷物として納品する
  2. 印刷用データとして納品する

この2パターンが大まかにあるかと思います。

もちろん、内容的に他社のコピーや模倣で制作することは考えられません。
クライアント様の品位を著しく損なうものになりますから。
そこは第1次段階の他者の知的財産権との干渉を回避すること、でしょう。

問題は2番目の「印刷用データとして納品する」ケースです。

通常「印刷用データとして納品」したとしても、そこに制作物の財産権を譲渡することの契約は内包されていません。
全くの別問題です。

名刺用の「印刷用データとして納品」しただけであって、制作前に条件とされていた一部の改変は大目に見たとしても、改変や転用は一切許される行為ではありません。なぜなら財産権を譲渡していないから。

以前 有限会社 松下商店 様の名刺デザインをさせていただきましたが、残念ながら無断使用を確認しています。

スクリーンショット 2017-01-06 10.09.55.png

こんな感じで車のラッピングに使われています。

クラウドソーシングでデータを提供したとはいえ、財産権の譲渡を契約していませんし、名刺のデータを一切の断りなく改変されていて、明らかな著作権の侵害です。

デザイン作業にかかる人件費ベースでも相当な赤字でしたが、それは横に置いておいても請けてみようと思った案件でした。
名刺とはいえ、デザインデータの作成に3000円なんて無理です(笑

私は AI ではありません。
なので、クライアント様から頂いたキーワードや画像をフォルダに放り込んで、3時間待っていれば最適な作業データが排出されるものではありません。そんなものあるなら欲しいくらいです。
コストカットは事業の上で大切な要素ですが、制作する側の人間への感謝や誠意といった感情が欠落しているないのでしょうか。
車のラッピングにしていただけるほど気に入ったのであれば、先方からまず連絡があって然るべきでしょう。

財産権の譲渡をした覚えがないのですから。

ここで改めて「財産権」とはなにか、と考えてみてください。
他のものに置き換えるなら、映画やアニメなどのデータが収められたブルーレイディスク(BD)と同じ、というところでしょうか。

確かにある程度の使用範囲を認めて印刷データをお渡ししましたが、もとの使用範囲を超えた領域については一切認めていません。
BDで言えば、購入したそのデータを使用して映画やアニメの上映会を無断で行い、しかもその入場料などの収入を得る行為をしているということと同じです。異なる目的で事業に使用されているわけですから。

では、一般的に譲渡所得が発生する場合にはどの様なことが起こり得るでしょうか。
税金が発生しますよね。不動産などの所得移譲の際には所得税などが発生し、それが国家や自治体の収入となります。
知的財産についても、同様に考えることが自然なことではないでしょうか。

私自身の制作したものがどれだけの経済効果を算出可能かを計上していないので、上記の車のラッピングの件で正確な数字を知りませんが、個人商店様とはいえ、多少なり広告効果はあるのではないでしょうか。
それぞれの業態で様々な広告の作り方はあると思います。つきじ喜代村がマグロを7420万円で落札したのも、様々な思いやロマンを広告として1匹のマグロの金額で表現した、ということだと感じています。
こうした広告効果を含め、事業全体にどの様に役に立ったか、という費用の数パーセントの金額をもって知的財産権についても所得の移譲となるはずです。

長くなりましたが、いくら友人の間であってもある目的のために制作したものを、内容が似ているからといって別な目的のために簡単に「頂けますか」っていうのはあり得ないはずなんです。
金額を聞かれるより、まずは自ら金額面も打診していただきたいのです。
著作権を放棄するならある目的のための売り上げの5%とか、少なくてもそれくらいでしょうか。

それよりもまず、内容が似ているからという理由で、例えば DM と ポスター を同じデータにすることはあり得ないと私自身では思います。いつ、どのように、どんな目的で、どんなエンドユーザーのために使われるかを想定して、印刷物などを作りたいといつも考えています。常に エンドユーザー ファーストです。似た目的でも微妙に条件が変化するかと思います。
この微妙な条件差を加味して、考えて アウトプット = 制作 を行っているわけで、ある程度は制作者としてのエンドユーザーに対する責任があると考えています。

こうした2重の問題から「頂けますか」という言葉は非常に悲しいし、粗末で頂けない言葉に感じます。
何より冒涜で背徳ではないかとすら感じます。
ラブコメの『逃げ恥』的には知的財産権の搾取とでもいうものではないでしょうか。
もちろん最初のオーダー時に使用目的を明言され、著作権の放棄に値する金額を明示されていれば、その時点で示談成立、となるのでしょうけど。

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